熱帯雨林気候の特徴を一言で表すと、「年中蒸し暑い」です。この記事では熱帯雨林気候の特徴、分布、植生・土壌、農業、暮らしなどについてわかりやすく解説していきます。最後には熱帯雨林気候の分布の覚え方も紹介するので、ぜひ最後まで読んでいってください。
熱帯雨林気候の特徴~サバナ気候との違いは?~
早速ですが、熱帯雨林気候の定義は次のようになります。
・最も寒い月の平均気温が18℃以上→Aの定義
・もっとも雨が少ない月の降水量が60㎜以上→fの定義
つまり、熱帯雨林気候は1年中蒸し暑いという特徴を持っています。例えば、熱帯雨林気候であるシンガポールの年平均気温は26.7℃で東京(15.7℃)より10℃以上高く、シンガポールの年降水量は2366㎜で東京(1482㎜)の1.6倍も雨が降ることになります。
熱帯雨林気候はアルファベットでAfと書きます。これは1文字目のAが熱帯であることを、2文字目のfが年中雨が降ることを表しています。覚え方としては、年中暑(Atsu)くて雨が降る(furu)と語呂合わせできます。詳しくはこちら→ケッペンの気候区分
なぜ熱帯雨林気候は降水量が多いのでしょうか?その原因は熱帯収束帯(熱帯低圧帯)にあります。熱帯雨林気候は赤道付近に位置し、強い日差しに照らされるので、地面が暖められその熱で上昇気流が生じます。この上昇気流が降水をもたらすのです。また、スコールなども降水量が多くなる原因です。詳しくはこちら→降水条件&乾燥条件について
熱帯雨林気候とサバナ気候の違いは何でしょうか?違いは降水パターンにあります。
年中多雨→熱帯雨林気候
乾季がある→サバナ気候
となります。
また、熱帯雨林気候は年中暑く、季節による気温の変化がないため、気温は、年較差<日較差となります。詳しくはこちら→年較差・日較差とは?
熱帯雨林気候の雨温図とハイサーグラフ
熱帯雨林気候の特徴を抑えたうえで、雨温図とハイサーグラフの確認をします。
熱帯雨林気候の定義である最寒月平均気温が18℃以上と、最小雨月降水量が60㎜以上ということが確かめられると思います。
熱帯雨林気候はどこに分布する?
熱帯雨林気候は年中蒸し暑いので、なんとなく赤道付近に分布しそうと予想できますね。地図を見てみましょう。
確かに、赤道付近に分布していることが分かります。
熱帯雨林気候の都市と国の例は、コンゴ盆地にあるキサンガニ(コンゴ共和国)、マダガスカル東岸にあるトゥアマシナ(マダガスカル)、コロンボ(スリランカ)、シンガポール(シンガポール)、クアラルンプール(マレーシア)、マナオス(ブラジル)、イキトス(ペルー)などです。
熱帯雨林気候の植生・土壌
熱帯雨林気候は、年間を通して温かく、また降水にも恵まれるため、植物が育ちやすく、多種多様の常緑広葉樹からなる熱帯雨林が形成されています。熱帯雨林は植物が何層にもわたっているため、地上には日光が届きにくく、湿気が多くなります。熱帯雨林は、地域によって呼び方が異なります。具体的には、東南アジアやアフリカではジャングル、アマゾン川上流ではセルバと呼ばれます。熱帯雨林気候の地域の河口部では、マングローブ林がみられます。
↓熱帯雨林
↓マングローブ
熱帯雨林気候の土壌はラトソルという赤い土です。植物が良く育つので、土壌もさぞかし養分に富んだ良い土だと思われるでしょう。しかし、実際はあまり養分が少なく農業には向かない土壌です。降水量が多く、水に溶けた養分が流れ出てしまうからです。一方、水に溶けにくく、赤い酸化鉄や酸化アルミニウムが地表に残るため、ラトソルは赤色をしているのです。また、アルミニウムを多く含んだラトソルはボーキサイトと呼ばれ、アルミニウムの原料として採掘されます。
熱帯雨林気候の農業
熱帯雨林気候で見られる農業形態は、焼き畑農業とプランテーション農業の2種類です。
焼き畑農業は、森林を焼き払ってできた土地で農業をする形態です。焼いたときに残った灰はそのまま肥料として用います。焼き畑農業で栽培される作物は、キャッサバ、ヤムイモ、タロイモなどのイモ類で、自分たちで食べるために栽培されています(=自給的農業)。
プランテーション農業は、欧米の資本・技術と現地の労働力を組み合わせた農業で、嗜好品や工業原料を単一耕作(モノカルチャー)する農業形態です。栽培される作物は、天然ゴムやパーム油です。詳しくはこちら→プランテーション農業とは?
熱帯雨林気候の暮らし
熱帯雨林気候の地域の伝統的な住居は高床式住居です。多雨による湿気と浸水を防ぐために床を高くし、風通しを良くしています。また、伝統的な衣服も風通しの良いものになっています。
熱帯雨林気候の地域は発展途上国が多く、また、その気候から多くの風土病(マラリア・黄熱病など)が残ります。
熱帯雨林気候の分布の覚え方とは?
先ほどの熱帯雨林気候の分布の地図なのですが、どこが何気候なのか覚えるのに苦労しますよね。そこで、熱帯雨林気候がなぜこれらの地域に分布するのかその理由を考えます。理解を伴った記憶にすることで簡単に分布を覚えられるようになるでしょう。
(※気候の分布は複雑な現象が合わさっているため1つの事象ですべてを説明できるわけではありません。紹介する説明はこじつけた部分もあり暗記のため考え方です。)
では、それぞれの地域ごとに見ていきます。
アジア
アジアは簡単です。降水をもたらす熱帯収束帯が1年を通してみられる地域がそのまま熱帯雨林気候になります。ちなみに、ボルネオ島の中央が熱帯雨林気候でない理由は標高が高いからです。
アフリカ
アフリカは少し複雑になります。アフリカも1年を通して熱帯収束帯がみられる地域が熱帯雨林気候に該当します。ただし、アフリカ大陸東部は標高が高く、1月には乾いた季節風が吹くため、少雨になります。よって熱帯雨林気候からは外れます。このため赤道付近の西部のみに分布します。
マダガスカル東岸は1年中熱帯収束帯があるわけではありません。ここは沖合に暖流が流れていて、その上空を貿易風が吹いています。暖流によって水分を吸収した貿易風がマダガスカル東岸の山脈にぶつかり降水するのです。
南アメリカ
南アメリカはさらに複雑になります。南アメリカも同様に、雨をもたらす熱帯収束帯が年中みられる地域が熱帯雨林気候になります。ただし、西側はアンデス山脈があるため気温が低く、熱帯ではなくなります。暖流の上を通過して水分を含んだ貿易風が、アンデス山脈にぶつかることにより、降水をもたらすので、熱帯雨林気候は赤道付近の大陸中央部にみられます。
いかがでしょうか。このように考えることで、分布が覚えやすくなったと思います。
まとめ
・最も寒い月の平均気温が18℃以上→Aの定義
・もっとも雨が少ない月の降水量が60㎜以上→fの定義
・植生は熱帯雨林
アジア&アフリカ→ジャングル
アマゾン川上流→セルバ
と呼ばれる
・土壌は赤く痩せたラトソル
・焼き畑農業(イモ類など)
・プランテーション農業(天然ゴムやパーム油など)