【地理】ホイットルセーの農業地域区分の地図や特徴を分かりやすく解説

農林水産業

高校地理の農業を勉強するうえで一番の山場である「農業形態による地域区分」について分かりやすく解説しています。ぜひ最後まで読んでいってください。

ホイットルセーの農業地域区分とは?

世界では、地域によって様々な形態の農業が行われています。なぜ地域によって農業形態が異なるのかというと、地域ごとに自然条件(気候・土壌など)や社会条件(市場との距離・資本力など)が異なるためです。

そこで、地理学者のホイットルセーは、以下の指標に注目し、世界の農牧業を13種類に分類しました。

ホイットルセーの農業地域区分の分類指標
  1. 作物と家畜の組み合わせ
  2. 栽培・飼育方法
  3. 労働・資本集約度
  4. 生産物は自給か販売か
  5. 農業設備や住居

この指標を使ってホイットルセーは世界の農牧業を13種類に分類しました。現在の高校地理では、ホイットルセーが分類した13種類に改良を加えたものを扱います。この記事でも高校地理に合わせて改良したものを紹介します。

世界の農業地域区分は次のように分類されます。

農業地域区分はその性質から、自給的農業、商業的農業、企業的農業に分けられます。自給的農業は自家消費目的で作物を栽培する農業で、商業的農業は販売目的で作物を栽培する農業で、企業的農業は販売目的で単一作物を大量生産する農業です。では、それぞれについて、順番にくわしく解説していきます。

自給的農業

自給的農業は伝統的農業ともいわれ、「自分たちで作った農作物を自分たちで食べる」というような形態の農業です。世界中の幅広い地域で見られます。近年は流通の発展によって販売目的での生産も行われています。自給的農業には、6つの形態があります。

自給的農業の6つの形態
  1. 遊牧
  2. 焼畑農業
  3. 粗放的定住農業
  4. 集約的稲作農業
  5. 集約的畑作農業
  6. (オアシス農業)

オアシス農業はもともとのホイットルセーの農業地域区分にはない区分ですが、現行の高校地理過程に頻出なのでリストアップしました。

遊牧

遊牧は、水や草を求めてヤギ・馬・トナカイなどの家畜とともに移動する粗放的な牧畜のことです。この形態は農業ができない気候である乾燥地域・寒冷地域・高山地域にみられます。下に遊牧の分布図を示します。

焼畑農業

焼畑農業とは、森林や草原を焼き入れし、それによってできた灰を肥料として利用する粗放的な農業のことです。畑の地力が衰え、雑草が生え始めると別の土地に移動して焼き畑を行います。主にアフリカや南アメリカ、東南アジアなどの熱帯地域で行われています。下に焼畑農業の分布図を示します。

粗放的定住農業

粗放的定住農業の仕組みは焼畑農業と同じく、森林や草原を焼き入れし、それによってできた灰を肥料として利用します。畑の地力が衰え、雑草が生え始めると別の土地に移動して焼き畑を行います。粗放的定住農業と焼畑農業の違いは、別の土地に移動して焼き畑を行う際に、人が定住したままなのが粗放的定住農業、畑とも一緒に移動するのが焼畑農業です。粗放的定住農業はアフリカ、中南米、東南アジアに見られます。下に粗放的定住農業の分布図を示します。

集約的稲作農業

集約的稲作農業は、経営規模が小さく労働集約的な稲作を中心とした農業のことです。狭い土地でも多くの労働力を費やすことで面積当たりの生産量が多くなり、土地生産性が高い農業と言えます。年降水量が1000㎜以上の多雨地域の沖積平野で見られる農業形態です。下に集約的稲作農業の分布図を示します。

上図のように、集約的稲作農業は季節風の影響を受けるモンスーンアジアに分布するので、アジア式稲作農業とも呼ばれます。

集約的畑作農業

集約的畑作農業も主にアジアで見られる農業です。年降水量が1000mm以下の、稲作には適さないが畑作ならできる地域に分布します。小麦が主な作物ですが、中国東北地方ではコウリャン、インドのデカン高原では綿花なども栽培されています。下に集約的畑作農業の分布図を示します。

(オアシス農業)

オアシス農業は先に紹介した集約的畑作農業の一種です。オアシス農業が行われる地域は乾燥しているため本来は農業に適しません。しかし外来河川や湧水から灌漑を行うことで水を得て作物の栽培を行っています。主な作物はナツメヤシや果物などです。下にオアシス農業の分布図を示します。

商業的農業

商業的農業は生産物の販売を目的とした農業です。産業革命以降に都市での農産物の需要が増えることによって発展しました。商業的農業には次の4つの農業形態があります。

商業的農業の4つの農業形態
  1. 混合農業
  2. 酪農
  3. 園芸農業
  4. 地中海式農業

混合農業

混合農業は食用の穀物、根菜類、試料用作物などの栽培と牛などの家畜の飼育を組み合わせた農業のことです。穀物、根菜類、試料用作物を栽培する畑を年ごとに変えるため、地力が保たれ土地生産性が高いのが特徴です。商業的農業に分類されますが、東ヨーロッパで行われる混合農業は自給的な側面があります。混合農業の分布図を以下に示します。

酪農

酪農は、飼料用作物を栽培して、乳牛を飼育することで、販売用の牛乳やバター、チーズなどの乳製品を生産する農業のことです。混合農業を行っている地域より冷涼で作物の栽培が困難な地域で見られます。酪農の分布図を以下に示します。

園芸農業

園芸農業は野菜や果物、花卉などを集約的に栽培する農業形態です。消費地の近くでは近郊農業が、消費地から離れたところでは輸送園芸が行われています。ビニールハウスなどを用いて施設栽培を行うことで、土地生産性・労働生産性はともに高くなっています。作物に鮮度が求められることが多いので大都市の近くに分布する傾向があります。園芸農業の分布図を以下に示します。

地中海式農業

地中海式農業は地中海性気候(Cs)の地域で行われています。地中秋性気候では夏季に乾燥するため、夏には耐乾性のオリーブやブドウが栽培され、冬は降水があるため小麦の栽培が行われています。また、家畜は混合農業が牛であったのに対して、地中海式農業は羊やヤギが主です。地中海式農業の分布図を以下に示します。

企業的農業

企業的農業も商業的農業と同じく、生産物の販売を目的とした農業です。しかし、企業的農業はより高い効率と利益を求めるために、より大きな資本を投下して単一の作物や家畜を大量生産することが特徴です。単一耕作をするため、それぞれの地域の自然条件・社会条件に適した作物を栽培する適地適作が行われています。企業的農業には次の3つの形態があります。

企業的農業の3つの形態
  1. 企業的穀物農業
  2. 企業的牧畜
  3. プランテーション農業

企業的穀物農業

企業的穀物農業は主に、南北米やオーストラリアなどの新大陸にみられる資本を投下して機械化された大規模な農業です。広大な土地を少ない人数で大型機械を用いて耕作するため、労働生産性が高くなりますが、土地生産性は低いことが特徴です。作物は主に小麦やトウモロコシです。企業的穀物農業の分布図を以下に示します。

企業的牧畜

企業的牧畜は牛や羊などの肥育を大規模に行う形態です。牧草地やフィードロットなどでの肥育を行い粗放的であることが特徴です。19世紀後半に冷凍船が発明されたことによって発展しました。分布はアメリカやオーストラリアなどの新大陸の半乾燥地域などです。企業的牧畜の分布図を以下に示しました。

プランテーション農業

プランテーション農業はコーヒー、カカオ豆、天然ゴムなどの熱帯性作物を大規模に単一栽培する農業のことです(モノカルチャー)。作った作物は輸出され、嗜好品や工業原料として用いられます。欧米の資本力と現地の労働力を組み合わせて、16世紀ごろより熱帯地域の旧植民地で発展していきました。プランテーション農業の分布図を以下に示します。

補足

ホイットルセーの農業地域区分と現在の農業形態には異なる点も存在します。例えば、オアシス農業や集約的稲作農業など自給的農業に分類される地域でも販売用の作物を生産していることや、商業的農業に自給的混合農業が分類されている点などです。この原因は、ホイットルセーの農業地域区分ができた後に、自給的・商業的・企業的の3つの分類を作ったことやホイットルセーの農業地域区分が作られたのが90年ほど前であることなどが考えられます。

まとめ

まとめ

〇ホイットルセーの農業地域区分の分類指標
作物と家畜の組み合わせ
栽培・飼育方法
労働・資本集約度
生産物は自給か販売か
農業設備や住居

〇自給的農業
…自給用に生産。伝統的農業とも
遊牧:水・草も求めて家畜とともに移動
焼畑農業:農地とともに住む場所も移動
粗放的定住農業:焼畑で農地は変えるが人は定住
集約的稲作農業:モンスーンアジアで見られ労働集約型
集約的畑作農業:アジアの少雨地域で見られ労働集約型(デカン高原で綿花栽培)
オアシス農業:乾燥地域で灌漑をする

〇商業的農業
…販売目的で栽培。ヨーロッパで発展。
混合農業:穀物・根菜・飼料用作物と家畜の飼育の組み合わせ
酪農:冷涼地域で牛乳や乳製品を生産
園芸農業:野菜・果物・花卉の集約的栽培
地中海式農業:夏に耐乾性作物、冬に小麦

〇企業的農業
…販売目的で大規模耕作。新大陸で発展。
企業的穀物農業:新大陸で資本投下。労働生産性が高い
企業的牧畜:新大陸の半乾燥地域で牛や羊など
プランテーション農業:熱帯性作物の単一栽培(モノカルチャー)

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