季節風(モンスーン)とは?【仕組み・風向き・特徴などを解説】

気候

季節風(モンスーン)とは?

季節風とは、夏と冬で風向きが逆になる風のことです。夏は海から大陸へ、冬は大陸から海へ風が吹きます。主に東アジア、東南アジア、南アジアにかけてみられます。季節風はモンスーンとも呼ばれています。これは、英語で季節風のことをmonsoon(モンスーン)というからですが、英語のmonsoon(モンスーン)の語源は、アラビア語の、mawsim(マウシィム)に由来します。

季節風の仕組み(メカニズム)

季節風の仕組みを理解するうえで必要となる知識は以下の3つです。

  1. 風は高気圧の場所から低気圧の場所に吹く
  2. 陸地は温まりやすく、冷めやすい。海は温まりにくく、冷めにくい
  3. 大気が暖められた場所は低気圧になり、大気が冷まされた場所は高気圧になる

「風は高気圧の場所から低気圧の場所に吹く」について解説

上の図を見てください。これは2つのコップが管でつながれているものです。この2つのコップに、水位差が出るように水を入れます。すると水位が高いコップから水位の低いコップに水が移動していくのが想像できると思います。これと同じ現象が大気でも起きているのです。

上の図は地上に気圧の高い部分と低い部分がある図です。すると空気は気圧の高い部分から気圧の低い部分に移動します。水が水位の高い方から低い方へ移動したのと同じように、大気も、気圧の高いほうから低い方へ移動します。

「陸地は温まりやすく冷めやすい。海は温まりにくく冷めにくい。」について解説

これも具体例で説明します。

まず陸地と海を温める場合を考えます。夏の浜辺を想像してください。この時、浜根の砂浜(陸地)は熱く、海水(海)は冷たく感じると思います。これは陸地が温まりやすく、海は温まりにくい例です。

次に陸地と海を覚ます場合を考えます。夏の寒い日の学校のプールを想像してください。夏の寒い日には、プールサイド(陸地)にいるより、プールの中(海)にいる方が温かく感じます。これは、陸地が冷めやすく、海が冷めにくい例です。

「大気が暖められた場所は低気圧になり、大気が冷められた場所は高気圧になる」について解説

まず、気圧とは、ある場所の上空の空気が地面を推す力のことです。

ある場所で大気は暖められると、膨張し密度が小さくなるため、軽くなり上昇します。大気が上昇しているとき、その場所の地面を押す力が小さくなるため、低気圧になります。(上の図)

逆にある場所で大気が冷まされると、収縮し密度が大きくなるため、重くなり下降します。大気が下降しているとき、その場所の地面を押す力が大きくなるため、高気圧になります。(上の図)

この3つのポイントがわかれば、季節風は理解できるはずです。それでは季節風の仕組みを見ていきましょう。

夏の季節風を説明

  1. 夏は太陽からのエネルギーが大きくなるので陸地と海が暖められます。
  2. ここで海より陸地の方が暖められやすいので、陸地の方が高温になります。
  3. そして、陸地の熱が陸上上空の大気を温めます。
  4. 陸地上空では大気が暖められて上昇するため、気圧が下がります。この時、陸地に比べ海は気圧が高くなります。
  5. 風が気圧の高い海から気圧の低い陸地に吹きます。

よって、夏の季節風は海から陸へ吹きます。

冬の季節風を説明

  1. 冬は太陽からのエネルギーが小さくなるので陸地と海が冷まされます。
  2. ここで陸地より海の方が冷まされにくいので、海のほうが高温になります。
  3. そして、海の熱が海上の大気を温めます。
  4. 海上では大気が暖められて上昇するため、気圧が下がります。この時、海に比べ陸地は気圧が高くなります。
  5. 風が気圧の高い陸から気圧の低い海に吹きます。

よって冬の季節風は陸から海に吹きます。

季節風がみられる場所

季節風は主に、東アジア、東南アジア、南アジアにかけてと、アフリカ、オーストラリア北部、南米のアルゼンチンの辺りで見られます。この中で、東・東南・南アジアは、季節風(モンスーン)の影響を強く受けているため、モンスーンアジアと呼ばれています。これには日本も含まれます。モンスーンアジアで季節風が顕著にみられる理由は、赤道付近が海洋でおおわれていること、その北部に大きな大陸があり、さらにその標高が高いことでより温めやすく冷めやすくなてっていることが考えられます。

日本の季節風

上の図のように、冬は大陸のシベリア高気圧から太平洋上の低気圧に向かって北西の季節風が吹きます。

冬の季節風の特徴。冬の季節風は日本海側に豪雪をもたらします。冬は、北東から季節風が吹きます。この季節風は日本海上空を通過します。この時、日本海には暖流の対馬海流が泣かれて水温が高いため蒸発量が多く、季節風は多くの水分を吸収します。水分を多く含んだ季節風が日本列島の脊梁(せきりょう)山脈にあたると、上昇気流が生じます。上昇気流が生じる過程で、大気が冷やされ、大気に含まれていた水蒸気が氷の粒になります。これが日本海側の山の斜面に落ちることによって、豪雪となるのです。日本海側で水分を失った季節風は太平洋側に吹き付けるころには乾燥してしまいます。この乾燥した北風はからっ風といいます。

上の図のように、夏は北太平洋高気圧からユーラシア大陸に向かって、南東の季節風が吹きます。

夏の季節風の特徴。日本海側でフェーン現象が生じることがあります。夏は海から大陸に向けて南東の季節風が吹きます。この季節風は海上を通過するため大量の水分を含んでいます。これが日本の脊梁(せきりょう)山脈にあたると、上昇気流が生じます。上昇気流が生じることで大気が冷やされ、雨雲を作り、山脈の風上側で雨を降らせます。この時大気の温度は100m上昇するごとに約0.5℃低下します。脊梁山脈を超えるころには、季節風は乾燥した状態となります。今度はこの乾燥した大気が脊梁山脈の斜面を下ります。この時、大気の温度は100m下降するごとに約1℃上昇します。この結果、山の風上側の気温より風下側の温度のほうが高くなることがあります。これをフェーン現象といいます。大気が上昇するときと下降するときで温度変化の大きさが違うのは、上昇する過程において、大気含まれていた水蒸気が液体に変化するときに凝縮熱という熱を発生するためです。フェーン現象は熱力学メカニズムと力学メカニズムがありますが、今回説明したものは熱力学メカニズムによるものです。

フェーン現象についての詳しい説明はこちら! フェーン現象とは?

東南アジアの季節風

東南アジアでは、冬に大陸から乾燥した季節風が吹くため、大陸部は乾季があります。よってタイ、カンボジア、ベトナム南部では、サバナ気候(Aw)、インド洋沿岸では弱い寒気のある熱帯雨林気候(Am)、インドシナ半島北部では温暖冬期少雨気候(Cw)となっています。これに比べ、マレー半島や、諸島部は季節風が会場を通過するとき、水分を含むので乾季がなく、熱帯雨林気候(Af) となっています。

南アジアの季節風

インド半島は夏季の間、南西の季節風が吹きつけます。南西の季節風は、インド半島に上陸すると、西ガーツ山脈とぶつかり上昇気流を生じます。この上昇気流が山の西側の斜面に大量の雨を降らせます。このような現象を地形性降雨といいます。またインド東部のアッサム地方も多雨なことで有名で、これは湿った季節風がヒマラヤ山脈にぶつかり、上昇気流を作ることで、地形性降雨を生じるからです。

なぜ海は温まりにくく冷めにくい?

もう少し発展的な話をします。なぜ陸地に比べて、海は温まりにくいのでしょうか?これは主に3つの要因から考えることができます。比熱と蒸発熱と海洋の対流です。

比熱について

水(海)は比熱(ひねつ)が大きいので温められにくいと考えられます。比熱はモノの温まりやすさを表します。比熱は1gの物質の温度を1℃上げるのに必要な熱量(エネルギー)のことで、単位は[J/g・K]です。例えば、水(海)の比熱は、岩石(陸地)の比熱のおよそ2~3倍です。つまり海と陸地を同じ温度暖めるには、海のほうが陸地の3倍熱量(エネルギー)が必要ということです。

蒸発熱について

水(海)は、太陽からのエネルギーを温度上昇のほかに蒸発することに費やしています。ではなぜ水(海)の蒸発熱は大きいのでしょうか?これは、水分子の水素結合という特別な結合の仕方に理由があると考えられています。原子は中心に正の電気を帯びた原子核、周りに負の電気を帯びた電子があります。

初めに、水素結合は分子間の結合ですが、分子内の結合について考えます。水分子は酸素原子と水素原子が共有結合してできている分子です。共有結合とは、例えば水分子の場合、酸素原子と水素原子のそれぞれ持っている電子を共有しあって結びつく結合のことです。そして水素原子と酸素原子は、分子内の電子を引き寄せる強さ(電気陰性度)が異なります。それにより結合して水分子になったときに、電気の偏りが生じます。

次に分子間の結合を考えます。上より、水分子には電気の偏りが生じていました。これは、水分子の一端が正に帯電して、もう一端が負に帯電しているということです。この状態の水分子がたくさん集まると、ある水分子の正の一端が、ほかの水分子の負の一端と結合します。これは、水分子など、限られた分子に存在する特殊なものです。

最後に、太陽からのエネルギーが加わった時の水分子の運動を考えます。太陽からのエネルギーが加わると、分子が暴れだします(動きます)。この分子の暴れ具合が温度です。ここで水分子は、熱を加えた時に、水素結合があるために、回転したり並進したりしにくくなっていると考えられます。また太陽からのエネルギーが水素結合を切るためにも使われています。このため、温度上昇に費やす熱が少なくなっていると考えられます。

対流について

陸地の表面は固定されているのに対して、水(海)の表面は、対流により、循環しています。このため熱で暖められた海水が深層の冷たい海水と混ざり合い、暖められにくくなっていると考えられます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました