フィヨルドとリアス海岸の違いについて解説

フィヨルドとリアス海岸、どちらも海岸にみられる地形で、見た目もよく似ています。両者の違いは何でしょうか。この記事は、フィヨルドとリアス海岸の違いと、それぞれの特徴などについて解説します。

そもそもフィヨルド・リアス海岸って何？

フィヨルド・リアス海岸はともに、谷が海に沈んでできたギザギザの海岸のことです。詳しくは、後程説明します。

フィヨルドとは？

フィヨルドとは、氷河が削ってできた谷に、海水が入り込んだ狭い入り江のことです。

フィヨルドの形成の仕方

このイラストは、フィヨルドのギザギザした海岸の断面図です。

まず降雪によって氷河が形成されます[図1][図2]。氷河はとても重く、少しでも傾斜があると下に下にと移動していきます。氷河が移動するときに、地面が削られることによって、谷ができます[図3]。そして削られた谷が沈降することで、谷に海水が侵入します。こうしてできたのが、フィヨルドです。

フィヨルドの特徴

フィヨルドの特徴は、以下の点があげられます。

もう一度、フィヨルドの断面図を見てみましょう。

これを見ると確かに谷底が広くなっています。ちなみに氷河に削られた谷底が広い谷のことをU字谷といいます。谷底が広いことには、メリットがあります。例えば、上のイラストのように大型の貨物船が通ることができることです。これにより、フィヨルド周辺は、天然の良港として町が発展する傾向があります。例えば、ノルウェーのフィヨルド沿いにあるナルヴィクという町は、内陸の町のキルナ、イェリヴァレでとれた鉄鉱石を積みだす港として栄えています。また、フィヨルドは、周囲を高い山に囲まれており、海岸に強風が吹きつけないことも良港として発展する理由の１つです。

フィヨルドの立地

フィヨルドは、氷河が削った谷に海水が侵入することでできる地形ですから、過去に氷河におおわれていた場所、つまり高緯度に立地します。また、氷河ができるということは、ある程度降雪量がなければなりません。これを満たすのは、海上から偏西風が吹き付ける場所です。上の地図は、主なフィヨルドの場所を示した地図です。いずれも高緯度で偏西風が吹き付けるところに立地していることがわかると思います。

リアス海岸とは？

リアス海岸とは、河川が削ってできた谷が沈降し、海水が入り込んだ入江のことです。

リアス海岸の形成の仕方

上のイラストは、リアス海岸のギザギザした部分の断面図です。

まず降水によって河川ができます[図1][図2]。河川が大地を侵食することによって、谷ができます[図3]。この谷が何らかの原因で沈降します。沈降した谷に海水が入り込んだものがリアス海岸です[図4]。

リアス海岸の特徴

リアス海岸の特徴は、以下の点があげられます。

もう1度リアス海岸の断面図を見てみましょう。

確かに、水深が深くなるにつれ、谷の幅が狭くなり、谷底が狭くなっています。リアス海岸の谷は、アルファベットのVのような形をしているので、V字谷と呼ばれます。

もう1つの特徴、河川の水が流入して汽水域を作るとはどういうことでしょうか。まず、汽水とは、海水に河川の淡水が混ざることによってできる低塩分の水のことです。リアス海岸は、河川が浸食した谷が沈降してできた入江ですので、リアス海岸には、河川の水が流れ込みます。下の地図を見てください。

これは、岩手県大船渡市の地図です。リアス海岸の入り江に河川の淡水が流れ込んでいるのがわかります。このように、海水と淡水が混ざり合い汽水域を作ると、そこは良好な漁場・養殖場となります。よって、リアス海岸には、漁港として利用されることがあります。

リアス海岸の立地

リアス海岸は世界中で見られますが、中でも日本は多くのリアス海岸を有しています。例えば、東北地方太平洋側の三陸海岸、福井県の若狭湾、三重県の志摩半島などです。海外に目を向けると、スペインのリアスバハス海岸などが有名です。リアス海岸という言葉は、このリアスバハス海岸に由来します。

フィヨルドとリアス海岸の違いとは？

フィヨルドとリアス海岸の違いは、地形の形成の仕方にあります。下の図を見てください。

これは、先ほど説明したフィヨルドとリアス海岸のギザギザ下部分の断面図をまとめたものです。

フィヨルドとリアス海岸の一番大きな違いは、

ということです。

地形の利用の違いは、

となります。

また、フィヨルドとリアス海岸はともに、沈水海岸という分類がされています。沈水海岸とは、土地の沈降や海水面の上昇によって陸地が海に沈むことです。フィヨルドは、氷河が削ったU字谷、リアス海岸は、河川が削ったV字谷が沈降してできたものです。