世界に暮らす人々は日々増加しています。人類史を振り返るとどのように人口は増加してきたのでしょうか?また人口が多い地域と人口が少ない地域の差は何でしょうか?今回は人口の分布と人口増加についてわかりやすく詳しく解説していきます。
世界の人口増加の推移
上のグラフを見ると世界人口は19世紀以降から急増していることがわかります。これは、出生率が増加し、死亡率が減少したことにほかなりません。ではその要因は何でしょうか?人類の歴史をたどって確認していきましょう。
人口増減の要因~食糧生産革命編~
人類は紀元前7000年ごろまで、狩猟採集により食料を確保する獲得経済を営んできました。ですが、獲得経済では安定して食料を得ることができません。自然からもたらされる食料に限界があったため、人口は少しずつしか増加しません。しかし、地球環境の変化で最終氷期(ヴュルム氷期)がおよそ1万年前に終わると、人類は農耕を始めました。これにより安定的に食料を得らえるようになったことで、地球上の人口は獲得経済の時代と比べ、急速に増加しました。
人口増減の要因~産業革命編~
人類は農耕の開始によりその人口を大幅に増やしました。さらに時代が下り、18世紀になると、人口増加率はより急速になります。この要因は産業革命です。産業革命によって工業生産量が増ました。また科学技術の発展によって、長距離間で物資の大量輸送が可能になり、貿易が活発になったことで、食料生産量に食料輸入が加わったことで食料供給量が増えました。これによって、人々の生活を支えられるようになりました。また、医療技術や医薬品の進歩、公衆衛生の改善、食生活の向上などによって、死亡率が低下しました。これらが要因となり、産業革命が始まった西ヨーロッパやアメリカで人口が増加しました。
人口増減の要因~第二次世界大戦後から現代編~
第二次世界大戦後の人口増加の舞台は、アフリカ、アジア、ラテンアメリカなどです。これらの地域は、第二次世界大戦後に乳幼児死亡率が大幅に減少しました。これは、産業革命時代の先進国と同様、医療技術や医薬品の進歩、公衆衛生の改善、食生活の向上などによるものです。しかし、これらの地域では出生率が高いままでした。その理由は、アフリカやアジアなどでは、子供を農業の労働力として使うためだといわれています。出生率が高いままで死亡率が低下することによる急速な人口増加を人口爆発といいます。
人口増減の要因~現代の人口減少編~
現在では様々な要因により人口が減少している地域もあります。例えばロシアや東ヨーロッパ諸国では、政治・経済に不安要素があるため、出生率が低く、人口が停滞していたり、減少していたりしています。例えば、ウクライナでは、1993年に最多人口の5217万人を記録して以来、減少が進み、2020年には4413万人になっています。また日本や韓国では、女性の社会進出が進み、未婚化、晩婚化、晩産化が進む中で欧州諸国と比べて手厚い保護が受けられないことや、将来への不安から、人口減少が進んでいます。
人口増減の要因~将来編~
人口もこのまま増え続けるとは限りません。現在人口の80%以上が発展途上国に集中していますが、アフリカ以外の発展途上国では出生率が低下しています。一方先進国も少子高齢化により人口減少に転じる国が出てきています。このような中で、世界の人口増加率は1970年代以降、鈍化しています。現在毎年7000万~8000万人の人口増加をしていて、2050年には世界人口が90億人を超えると予測されています。
不均等な世界の人口分布
世界で人口が集中している場所はどこでしょうか?結論から述べると、食料生産が安定している地域です。それでは人口密度が高い地域と低い地域についてみていきましょう。
人口密度が高い地域は?
人口密度が高い地域は主に2つのグループに分けられます。
1つ目は、日本~インドにかけてのモンスーンアジアの地域です。モンスーンアジアとは、モンスーン(季節風)の影響を受けるアジアのことです。モンスーン(季節風)とは、夏に海洋から大陸に、冬に大陸から海洋に吹く風です。このモンスーン(季節風)のおかげで、夏に高温多雨となり、コメの栽培ができるようになります。そしてコメはほかの穀物と比べて、単位面積当たりの収穫量とカロリーが高いため、高い人口扶養力を持ちます。言い換えると、狭い農地でもたくさんの人口を養えるということです。よってこれらの地域では人口密度が高くなります。日本~インドにかけてのモンスーンアジアには、世界人口の6割が集中しています。
2つ目は、西ヨーロッパや北アメリカ北東部などの地域です。これらの地域では、高い技術力によって、効率の良い食料生産ができることや、高所得であるため、外国からの食料輸入が可能であることが要因です。
主な人口密度が高い国
バングラディシュ :1109人/km2
韓国 : 519人/km2
イスラエル : 443人/km2
オランダ : 419人/km2
日本 : 333人/km2
人口密度が低い地域は?
人口密度が低い地域は、食料生産が安定していない地域です。例えば、寒帯、乾燥帯、熱帯の密林、高地です。これらの地域では厳しい自然環境により人間が住むのに向かない土地です。具体的には、寒帯のシベリア、乾燥帯の西アジア、北アフリカなどです。
主な人口密度が低い国
モンゴル :2人/km2
オーストラリア :3人/km2
アイスランド :4人/km2
ロシア :9人/km2
エクメーネ・アネクメーネ
人間が日常的に居住している地域をエクメーネ、人間が永続的に居住できない地域をアネクメーネ(ノンエクメーネ)といいます。エクメーネの分布は食料が得られる地域の分布とほぼ一致しています。具体的には、作物の栽培が可能な最暖月平均気温が10℃以上かつ標高3500m以下、牧畜が可能な年降水量250㎜以上です。また人類は、移動・拡散や、科学技術の発展により、その居住地を増やしてきました。この結果エクメーネは拡大し、全陸地面積の88%に達しています。人間の進出により、人が日常的に居住するようになったアネクメーネを、ズブエクメーネと呼びます。ズブエクメーネは主に、鉱山開発によるものが多いです。技術が発達し、交易が盛んになった現在では、鉱山で得た利益で、ほかの地域から食料を買ってこればよいのです。
マルサスの「人口の原理」
地球はどのくらいの人口まで人間を養うことができるでしょうか?1798年、イギリスで人口の抑制を説いた人物がいました。R.マルサスです。「人口が1,4,8,16、、、と等比数列で増加していくのに対し、食料は1,2,3,4、、、と等差数列でしか増えないから、人口抑制をするべきだ」というのが彼の主張です。しかし、予想は現在のところ外れました。品種改良や新大陸への進出によって人口扶養力が高くなったため、全人口を養いきれる食料を生産できているのです。
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