安定陸塊・古期造山帯・新期造山帯の違い
安定陸塊・古期造山帯・新期造山帯には、その外見上の特徴から
安定陸塊:平原や高原
古期造山帯:低くなだらかな山脈
新期造山帯:高く急峻な山脈
という違いがありますが、古期造山帯にも高い山脈があったりと正確な相違点ではありません。では両者の違いは何でしょうか?安定陸塊と造山帯の両者の違いは、その形成期の違いにあります。
上の表のとおり、
- 安定陸塊は先カンブリア時代に造山活動が、
- 古期造山帯は古生代に造山活動が、
- 新期造山帯は中生代と新生代に造山活動が
起きたという違いがあります。
この造山活動の時期の違いによって
- 安定陸塊は長い間浸食され、山が削られ平原や高原に、
- 古期造山帯は少しの間浸食され、山が少し削られ低くなだらかな山脈に、
- 新期造山帯はほとんど浸食されずに、そのままの形の高く急峻な山脈に
なりました。これが現在の外見上の差異につながっているのです。
安定陸塊:先カンブリア時代に造山活動
古期造山帯:古生代に造山活動
新期造山帯:中生代と新生代に造山活動
3つの違いが分かったところで、それぞれの特徴を見ていきましょう。
安定陸塊の特徴
安定陸塊の特徴は以下の4点です。
- 先カンブリア時代に造山活動
- 平坦な平原や高原が多い
- 楯状地と卓状地に分けられる
- 鉄鉱石が産出される
1,2について。安定陸塊は上の図の通り先カンブリア時代(46億年前∼5.4億年前)に造山活動をして形成されたもっとも古い土地のことです。造山活動から長い年月が経っていますから、それだけ浸食されていた期間も長いです。山が浸食され続けた結果として平坦な平原や高原がみられます。
3の楯状地と卓状地に分けられるについて。楯状地は「たてじょうち」、卓状地は「たくじょうち」と読みます。安定陸塊は形成の仕方によって楯状地と卓状地に分けられます。
楯状地:先カンブリア時代の岩石が地表に露出した場所
卓状地:先カンブリア時代の岩盤の上に古生代以降の地層が堆積した場所
楯状地は先カンブリア時代の造山活動によってできた岩盤が浸食されて現在も先カンブリア時代の岩石が露出している場所のことです。その特徴として盾を伏せたような形であることがあげられます。
これに対して卓状地は、以下のような形成過程です。
- 先カンブリア時代の造山活動によって山地ができる
- 浸食によって平坦な土地となる
- この土地が地殻変動や気候変動により海に沈む
- 海に沈んだことで海底に地層が水平に堆積する
- もう一度地上に隆起して先カンブリア時代の岩盤の上に古生代以降の地層が堆積した土地ができる
卓状地は先カンブリア時代の岩盤の上に古生代以降の地層が堆積した台地や平野です。
その特徴として、テーブルのような平らな形をしていることがあげられます。
4鉄鉱石が産出されるについて。安定陸塊では比較的鉄鉱石が産出されやすい傾向があります。この理由については後述の「安定陸塊でとれる鉱山資源」の章で解説しています。
安定陸塊の場所については「安定陸塊の分布地図」の章で解説しています。
新期造山帯の特徴
新期造山帯の特徴は以下4点です。
- 中生代と新生代に造山活動
- 高く急峻な山脈
- 火山・地震が多い
- 石油が産出される
1,2について。上の図のように新期造山帯は中生代(2.5億年前~6600万年前)と新生代(6600万年前~現在)の造山活動によって形成された造山帯です。造山活動後の浸食された期間が短いため、現在でも高く急峻な山脈となっています。新期造山帯がある場所はプレートの境界上です。また海岸周辺の新期造山帯では弧状列島がみられます。弧状列島とは大陸と海洋の間にあり、弧のような形をした列島のことで、日本列島も弧状列島の1つです。
3について。新期造山帯は造山活動が最も新しく、現在でも火山活動や地震が多いです。日本もこの新期造山帯に属しているため、火山・地震ともに多くなっています。自然災害が多い一方で、観光資源としても利用されます。
4について。新期造山帯では金・銀・スズや石油が産出される傾向があります。これらの鉱物資源が取れる理由は「新期造山帯でとれる鉱山資源」の章で解説しています。
新期造山帯の場所については「新期造山帯の分布地図」の章で解説しています。
古期造山帯の特徴
古期造山帯の特徴は以下の4点です。
- 古生代に造山活動
- 低くなだらかな山地
- 例外的に標高の高い天山山脈・アルタイ山脈
- 石炭が取れる
1,2について。上の図のように古期造山帯は古生代(5.4億年前~2.5億年)の造山活動にとってできた造山帯です。古期造山帯という名前とは反対に、現在では造山活動は行われていません。
3について。一般に低くなだらかな古期造山帯ですが、例外的に天山(テンシャン)山脈・アルタイ山脈は標高が6000m級や7000m級の山々が連なっています。
この地図にある通り、天山山脈・アルタイ山脈はインドの北部に位置しています。例外的に標高が高い理由は、造山活動が終わり、低くなだらかな山脈となった後に、インドがユーラシア大陸と衝突することで断層運動を起こし再び隆起したためです。
4について。古期造山帯では石炭が産出されます。石炭が産出される理由については「古期造山帯でとれる鉱山資源」の章で解説しています。
古期造山帯の場所については「古期造山帯の分布地図」の章で解説しています。
新期造山帯の分布地図
新期造山帯は
・環太平洋造山帯
・アルプスヒマラヤ造山帯
の2つだけです。2つの造山帯の山脈について見ていきましょう。
・ロッキー山脈
・アンデス山脈
環太平洋造山帯の属する諸島は、
・西インド諸島
・アリューシャン列島
・千島列島
・日本列島
・フィリピン諸島
などがあります。
これらの列島は、弧が連なった形をしていることから弧状列島と呼ばれています。
アルプスヒマラヤ造山帯の山脈は次の拡大地図です。
- アトラス山脈
- ピレネー山脈
- アルプス山脈
- ディナルアルプス山脈
- カルパティア山脈
- カフカス山脈
- ザグロス山脈
- ヒマラヤ山脈
古期造山帯の分布地図
古期造山帯は新期造山帯以外の場所に分布します。
- ぺニン山脈
- スカンディナビア山脈
- ウラル山脈
- アルタイ山脈
- テンシャン山脈
- ドラケンスバーグ山脈
- グレートディヴァイディング山脈
- アパラチア山脈
安定陸塊の分布地図
安定陸塊の分布は、造山帯以外の場所にあります。安定陸塊のうち有名な楯状地と卓状地はそれぞれ以下の通りです。
- バルト楯状地
- アフリカ楯状地
- オーストラリア楯状地
- カナダ楯状地
- ギアナ楯状地
- ブラジル楯状地
- ロシア卓状地
- シベリア卓状地
安定陸塊でとれる鉱山資源
安定陸塊でとれる鉱山資源は鉄鉱石です。
安定陸塊で鉄鉱石が取れる理由は以下のプロセスです。
- 大昔は大気中に鉄の成分が含まれていました。
- 大気中の鉄は雨に溶け込み降り注ぎ、海水中に鉄イオンとして溶解しました。
- 海中の植物が光合成をしてできた酸素と、鉄イオンが結合し海底に沈殿しました。
- 先カンブリア時代に、この鉄を含む海底が隆起し陸地になりました。
先カンブリア時代の造山活動によって形成されたのが安定陸塊だから、安定陸塊で鉄鉱石が取れるというわけです。
新期造山帯でとれる鉱山資源
新期造山帯では石油が産出されています。
軽い液体である石油は地中を自由に移動することができます。このため軽い石油は上へ上へと移動しようとするため、上の図のような褶曲(しゅうきょく)構造の背斜部分で産出されやすくなります。褶曲構造とは、地層が横から圧力を受けて波打つことで、波打った凸部分を背斜、凹部分を向斜と呼びます。この褶曲構造が新期造山帯でよくみられるため、新期造山帯で石油が取れるといわれています。
古期造山帯でとれる鉱山資源
古期造山帯でとれる鉱山資源は石炭です。
古期造山帯は古生代に造山活動をして形成されたものです。古生代はシダ植物が多く生えていました。このシダ植物が地中に埋まり、その上に堆積した土砂の圧力を受けることで石炭に変化したといわれています。このため、古生代の地質である古期造山帯では石炭が多く産出されます。
古期造山帯には
- アパラチア山脈のアパラチア炭田
- ぺニン山脈のヨークシャー炭田
- グレートディヴァイディング山脈のモウラ炭田
などがみられます。
大地形とは
これらの安定陸塊・古期造山帯・新期造山帯は大地形と呼ばれます。大地形とは何でしょうか?
地形には
- 大地形
- 小地形
の2種類あります。
大地形は地球内部の運動(内的営力)による大規模な地殻変動によってできた地形です。これに対して、小地形は雨や風による浸食作用(外的営力)によって形成された地形のことです。
まとめ
安定陸塊・古期造山帯・新期造山帯の違い
- 安定陸塊:先カンブリア時代に造山活動
- 古期造山帯:古生代に造山活動
- 新期造山帯:中生代と新生代に造山活動
安定陸塊の特徴
- 先カンブリア時代に造山活動
- 平坦な平原や高原が多い
- 楯状地と卓状地に分けられる
- 鉄鉱石が産出される
新期造山帯の特徴
- 中生代と新生代に造山活動
- 高く急峻な山脈
- 火山・地震が多い
- 石油が産出される
古期造山帯の特徴
- 古生代に造山活動
- 低くなだらかな山地
- 例外的に標高の高い天山山脈・アルタイ山脈
- 石炭が取れる
コメント