遊牧が行われる気候や場所について分かりやすく解説~遊牧・移牧・放牧の違い~

農林水産業

ホイットルセーの農業地域区分の1つである遊牧について分かりやすく解説します。また、遊牧・放牧・移牧の違いも後半で解説しているのでぜひ最後まで読んでいってください。

遊牧とは?

遊牧とは、自然の草や水を求めて家畜とともに移動しながら生活する農業形態です。ホイットルセーの農業地域区分の分類だと、下の図のようになります。

遊牧は自給的な性格があります。自給的とは家畜からとれるミルクや皮を自分たちで消費するというものです。また、粗放的であるのも特徴です。粗放的とは、土地にあまり手を加えないということです。遊牧は自然に生えた草を家畜のえさにしているので、土地には手を加えていません。

遊牧の分布は3パターン

遊牧の分布は、遊牧が行われる理由を考えればよいです。遊牧が行われる理由は、

①雨が降らず乾燥しているため耕作ができず遊牧を行う
②寒すぎて耕作ができず遊牧を行う

の2パターンです。この条件に当てはまる気候の地域で遊牧が行われます。具体的には、次のような気候です。

遊牧が行われる気候
  • 寒帯のツンドラ気候(ET)(寒すぎて耕作不可)
  • 高山気候(H)(寒すぎて耕作不可)
  • 乾燥帯 (乾燥で耕作不可)

実際に地図で確認してみます。

地域と気候の対応関係をまとめると次のようになります。

地域気候分布の理由
北アフリカ 西アジア モンゴル乾燥帯乾燥で耕作不可
チベット高原高山気候寒すぎて耕作不可
アラスカ北部 ロシア北部ツンドラ気候寒すぎて耕作不可

場所・気候・民族・家畜の対応関係

各地域で、民族や家畜が異なります。これをまとめます。

乾燥地域の遊牧民

場所民族など家畜
北アフリカトゥアレグラクダ やぎ 羊
アラビア半島ベドウィン馬 やぎ 羊
モンゴルモンゴル族馬 やぎ 羊

北アフリカ~モンゴルにかけてのステップ気候の地域では遊牧が行われています。遊牧民は定住せず、家畜とともに移動します。そこで寝泊まりするのが移動式テントです。この移動式テントは、中央アジアではユルト、モンゴルではゲル、中国ではパオと呼ばれています。

乾燥地域の人々は、伝統的には家畜を荷役用として使用し商隊(キャラバン)を組んで交易を行ったりしていました。シルクロードもこの地域を通っています。

寒冷地域の遊牧民

場所民族など家畜
アラスカ~グリーンランドイヌイット
スカンディナビア半島北部サーミ人トナカイ
ロシア北部サモエード人(ネネツ人など)トナカイ

イヌイットはエスキモーとも呼ばれていました。イヌイットの家畜が犬というのは驚かれるかもしれませんが、犬と一緒にトナカイを狩ったり、オットセイやセイウチを捕まえたりする狩猟生活をしていました。イヌイットの住居は雪を積み上げって作ったイグルーというものです。

高山地域の遊牧民

場所民族など家畜
チベット高原ヤク
アンデス山脈インディオリャマ アルパカ

高山地域も気温が低く、耕作ができないため遊牧が行われています。各地域の民族や家畜などを紹介してきましたが、現在では遊牧民の定住化も進んでいて、伝統的な暮らしをしている人々が減少しているのも事実です。

遊牧・移牧・放牧の違いや関係性は?

今回は遊牧について紹介しましたが、似た言葉に放牧・移牧があります。遊牧・移牧・放牧の違いとは何でしょうか?まず、1つずつ紹介します。

遊牧

自然の草や水を求めて家畜とともに移動する形態

遊牧は、家畜も人も移動しながら暮らします。草を求めて水平方向に移動することが特徴です。

移牧

夏は暑さを避けるため山で放牧し、冬は山のふもとの畜舎で飼育する形態

移牧は主にスイスなどアルプス山脈周辺で行われます。山を上下に移動するので、移動方向は垂直と言えます。ホイットルセーの農業地域区分では地中海式農業に分類されます。移牧の一番の特徴は家畜の主人以外の家族が定住していることです。主人以外の家族は山のふもとなどにある家に定住し、主人だけが山を往来します。

放牧

畜舎で飼わずに家畜を放し飼いにする形態

放牧の一番の特徴は、人も家畜も移動せず、定住している点です。これら3つの特徴をまとめて関係を表すと下の図のようになります。

まとめ

まとめ

〇遊牧とは
自然の草や水を求めて家畜とともに移動する農業形態

〇遊牧が行われる乾燥地域
北アフリカ~西アジア~モンゴル
ラクダ・やぎ・羊・馬

〇遊牧が行われる寒冷地域
アラスカ~グリーンランド
スカンディナビア半島北部
ロシア北部
トナカイなど

〇遊牧が行われる高山地域
チベット高原:ヤク
アンデス山脈:リャマ・アルパカ

〇移牧
夏は暑さを避けるため山で放牧し、冬はふもとに畜舎で飼育する形態

〇放牧
畜舎で飼わずに家畜を放し飼いする形態

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