【地理・農業まとめ】成立条件・農業形態・主な作物まで解説

農林水産業

この記事では、主に高校地理の範囲の農業についてまとめています。地図やイラストを使って分かりやすく解説しているので、ぜひ最後まで読んでいってください。

農業の成立条件

農業はそれぞれの作物や家畜に適した条件が必要です。この条件は、自然的条件と社会的条件の2つに分けられます。

農業の自然的条件として、地形や土壌があげられます。急な斜面や痩せた土では作物の栽培ができないのはイメージしやすいと思います。そして、適切な気温や降水も必要です。寒すぎると耕作はできません。また、社会条件も大切な要素です。例えば、生鮮食品は消費地から近い所で作ったほうが良いです。宗教上の戒律も農業に影響を及ぼします。ヒンドゥー教徒は牛肉を食べないことなどです。

農業の集約度と生産性

集約度と生産性は農業の効率性にスポットを当てます。まず、用語の確認をします。

農業を知るうえでは、上の図のような生産性と集約度という考えが大切です。

労働生産性:農民1人当たりの生産量
土地生産性:農地の面積当たりの生産量
労働集約度:農地の面積当たりの人数
資本集約度:農地の面積当たりの資本

また、集約度によって2つの農業形態に分けられます。

集約的農業:面積当たりの労働力や資本が多い農業
粗放的農業:面積当たりの労働力や資本が少ない農業

さらに生産性から次のようなグラフを作ると、4つの農業の型に分けることができます。

アフリカ型:土地生産性・労働生産性がともに低い農業
アジア型:労働生産性は低いが土地生産性は高い農業
新大陸型:土地生産性は低いが労働生産性は高い農業
ヨーロッパ型:土地生産性・労働生産性がともに高い農業

農業形態

地理学者のホイットルセーは次の指標をもとに農業地域の形態を分けしました。

  • 作物と家畜の組み合わせ
  • 作物と家畜の生産方法
  • 労働資本の集約度と収益性
  • 自給用か販売用か
  • 農業施設

自給的農業

自給的農業は生産物を自ら消費する形態の農業です。自給的農業には次の5つの形態があります。

自給的農業5つ

・遊牧
・焼畑農業
・粗放的定住農業
・集約的稲作農業(アジア式稲作農業)
・集約的畑作農業(アジア式畑作農業)

遊牧

上の地図のように、遊牧は北アフリカ~西アジアにかけての乾燥地域や、北極圏のツンドラ気候の地域で行われている牧畜です。乾燥地域ではヤギラクダなどの家畜を、ツンドラ気候の地域ではトナカイなどの家畜とともに、水や草を求めて移動します。移動しやすいように住居がテント状になっていることが特徴です。このテントはモンゴルではゲル、中央アジアではユルトと呼ばれます。

焼畑農業

上の地図の赤色の地域で行われている農業形態です。この地域は養分に乏しいラトソルという酸性の土壌であったり雑草や害虫が多かったりと、農業に向きません。これを解消するために、森林や草原を焼き、できた灰を肥料にします。しかし、同じ土地で栽培を繰り返すと地力が落ち収穫量が減ってきます。すると今の農地を捨てて別の森林や草原を焼いて新しい農地をつくります。主な作物はキャッサバタロイモなどのイモ類です。

粗放的定住農業

上の地図の赤色の地域で行われている農業形態です。粗放的定住農業も焼畑農業と同じく焼畑を行います。異なる点は、農地を別の場所に変えるときに、住居も移動するかです。農地と一緒に住居が移動するのが焼畑農業、移動せず定住するのが粗放的定住農業です。この農業形態では粗放的なため土地生産性は低くなります。

集約的稲作農業(アジア式稲作農業)

上の地図の赤色の地域で行われている農業形態です。季節風の影響で降水量が多くなり、年降水量が1000㎜を超えるようなモンスーンアジアの沖積平野で行われる農業です。作っている作物は米です。米は単位面積当たりの収穫量が多く、土地生産性が高くなります。一方、労働集約的な農業ですので、労働生産性が低くなるのが特徴です。

集約的畑作農業(アジア式畑作農業)

上の地図の赤色の地域で行われている農業形態です。アジアの年降水量が500㎜~1000㎜の地域で小麦大豆トウモロコシなどを栽培します。具体的にはインドのデカン高原や中国の華北地方などで行われています。労働生産性は低い点は集約的稲作農業と同じです。

オアシス農業

上の地図の赤色の地域で行われている農業形態です。集約的畑作農業の形態の1つですが独立した章を設けました。オアシス農業は乾燥地域で外来河川や泉、地下水を利用した農業です。水源と集落や農地が遠い場合、地下水路で水を通します。この地下水路はイランではカナート、北アフリカでは、フォガラアフガニスタンではカレーズと呼ばれています。作物は果樹ナツメヤシなどです。

商業的農業

商業的農業は生産物の販売を目的とした農業です。産業革命以降のヨーロッパで発展しました。商業的農業には次の5つの農業があります。

商業的農業4つ

・混合農業
・酪農
・園芸農業
・地中海式農業

混合農業

上の地図の赤色の地域で行われている農業形態です。混合農業はヨーロッパが起源で今もヨーロッパを中心にアメリカ中部などでも行われています。麦類や根菜、家畜飼料などの作物の栽培と牛や豚などの家畜の飼育を組み合わせた形態です。耕地を区切って輪作を行うため生産性が高いことが特徴です。

酪農

上の地図の赤色の地域で行われている農業形態です。乳牛を飼育し、生乳やバターなどの酪製品を作ります。耕地では乳牛の飼料用の牧草や麦類の栽培を行います。消費地に近い場所では牛乳として出荷され、消費地から遠い場所ではバターやチーズなどの加工品として出荷されます。農業に不向きな冷涼でやせた土地で行われることが特徴です。

園芸農業

上の地図の赤色の地域で行われている農業形態です。消費地が近くにある場所での近郊農業が主でしたが、交通網の発展により消費地原離れた場所での輸送園芸も盛んになりました。集約的で資本生産性・労働生産性がともに高いことが特徴です。鮮度が大切な都市向けの野菜の栽培が行われています。

地中海式農業

上の地図の赤色の地域で行われている農業形態です。地中海性気候に属し、夏に乾燥し冬に降水が見られる地中海沿岸やアメリカのカリフォルニアなどに分布します。夏にはオリーブ、オレンジ、ブドウなどの樹木園芸が、冬には小麦の栽培が行われます。夏に乾燥するため牧草が少なく、ヒツジやヤギが飼育されます。

企業的農業

企業的農業は、多額の資本と多くの労働力を使う大規模な農業です。主に、南北アメリやオーストラリアなどの新大陸で見られます。企業的農業は次の3つに分類できます。

企業的農業3つ

・企業的穀物農業
・企業的牧畜
・プランテーション農業

企業的穀物農業

上の地図の赤色の地域で行われている農業形態です。南北アメリカ大陸やオーストラリア大陸などの新大陸で見られます。広大な農地で、機械を使用し、大量生産をすることで、労働生産性が高くなりますが、土地生産性は低いことが特徴です。輸出用の小麦トウモロコシ大豆などを栽培します。

企業的牧畜

上の地図の赤色の地域で行われている農業形態です。新大陸のうち、企業的穀物農業が行われる地域より降水量の少ない半乾燥地域で見られます。牛や羊などが飼育されます。19世紀後半の冷凍船の出現により、発達しました。

プランテーション農業

上の地図の赤色の地域で行われている農業形態です。主に、熱帯地域にみられます。現地の安価な労働力と企業の資本を組み合わせてコーヒー豆や天然ゴムなどの単一耕作(モノカルチャー)を行います。植民地の独立により国有化や自作農園になるなど形態が変化しています。

おもな農畜産物の生産と輸出入

ここからは主な農畜産物の生産量と輸出入のデータから、作物の特徴を見ていきます。

上に、米の生産量の地図と生産量・輸出入量の円グラフを示しました。地図を見ると生産国がインド~中国にかけてのモンスーンアジアで多くなっていることが分かります。米の栽培には1000㎜以上の年降水量が必要だからです。米は自給的な作物なので、生産量に占める輸出量は約5%少なくなっています。米の輸入は人口増加国に顕著にみられます。

小麦

上に、小麦の生産量の地図と生産量・輸出入量の円グラフを示しました。地図を見ると、米と比較してヨーロッパや新大陸など比較的広い地域で栽培されていることが分かります。小麦は生産量に占める輸出量の割合20%を超え、商品化率が高いことが分かります。小麦の輸出国は、広大な土地で機械化した農業を行っているアメリカ、カナダ、オーストラリアなどの新大陸の国が目立ちます。

トウモロコシ

上に、とうもろこしの生産量の地図と生産量・輸出入量の円グラフを示しました。とうもろこしは食用のほか、家畜の飼料用やバイオエタノール用にも使用されます。粗放的な栽培が可能で、生産量は、アメリカと中国で50%を超えることが特徴です。またアメリカ・アルゼンチン・ブラジルなどの新大陸の国の輸出が目立ちます。

大豆

上に、大豆の生産量の地図と生産量・輸出入量の円グラフを示しました。アメリカ・ブラジル・アルゼンチンの3カ国で生産量の8割を占めていることが特徴です。大豆は、食用油のほか家畜の飼料用としても用いられます。中国は家畜の飼料用の大豆の輸入量が多く、世界の輸入用の6割を占めています。

上に、牛の頭数の地図・円グラフと牛肉の輸出入量の円グラフを示しました。牛の頭数の2位はインドです。インドで多数を占めるヒンドゥー教徒は牛肉を食べませんが、牛乳や乳製品の生産が多いため牛の頭数も多くなっています。また19世紀末に冷凍船が出現したことによって、ブラジルやオーストラリアなどの新大陸での輸出向けの牛肉の生産が飛躍的に拡大しました。

上に、豚の頭数の地図と円グラフを示しました。中国が約半数を占めていることが特徴です。また、ソーセージで有名なドイツをはじめとしたヨーロッパでも頭数が多いことが確認できます。豚肉は牛肉と比べると地産地消的な側面が強く輸出量が少ないです。

上に、羊の頭数の地図・円グラフと牛肉の輸出入量の円グラフを示しました。オーストラリアやニュージーランドで生産された羊毛は、中国に輸出されます。羊は乾燥地域でも飼育可能であるので、降水量の少ない西アジアも頭数が多いことが確認できます。

まとめ

まとめ

〇農業の成立条件
・自然的条件(気候・地形・土壌)
・社会的条件(市場との距離・農業政策など)

〇集約度と生産性
労働生産性:農民1人当たりの生産量
土地生産性:農地の面積当たりの生産量
労働集約度:農地の面積当たりの人数
資本集約度:農地の面積当たりの資本

〇自給的農業5つ
遊牧
焼畑農業
粗放的定住農業
集約的稲作農業(アジア式稲作農業)
集約的畑作農業(アジア式畑作農業)

〇商業的農業4つ
混合農業
酪農
園芸農業
地中海式農業

〇企業的農業3つ
企業的穀物農業
企業的牧畜
プランテーション農業

〇米
自給的で生産量に占める輸出量が少ない

〇小麦
商業的な作物で生産量に占める輸出の割合が高い

〇とうもろこし
食用・飼糧・バイオエタノールに利用

〇大豆
アメリカやブラジルから中国に輸出

〇牛
輸出は新大陸の国とインド

〇豚
頭数は中国が45%/輸出量少ない

〇羊
乾燥地域で飼育/オーストラリア・ニュージーランドから中国に輸出

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