プランテーション農業はどこでどんな作物を育てているの?メリットデメリットについてもわかりやすく解説

農林水産業

プランテーション農業の特徴

プランテーション農業

欧米諸国が熱帯・亜熱帯地域にある植民地で、輸出向けの作物を大規模に、単一耕作するもの

プランテーション作物は輸出用に栽培されているので、生産国での消費が少なく、生産量がほとんどそのまま輸出量になることが特徴です。

プランテーション農業の特徴をまとめると以下の通りです。

特徴

・どこ?:熱帯・亜熱帯地域の旧植民地(特に沿岸部)

・いつ?:17世紀~現在

・何を作る?:天然ゴムや油やしなどの工業原料やカカオやコーヒーなどの嗜好品

プランテーション農業の特徴をより詳しく知るためには、その歴史を振り返ることが大切です。

プランテーション農業の歴史

プランテーション農業は、どのようにして発展してきたのでしょうか。時は18世紀の産業革命までさかのぼります。欧米では、産業革命が起き、工業生産量は急激に増え、人々の生活は豊かになりました。生産量が増加したため、工業生産に必要な天然ゴムや綿花などの原料が不足しました。それと同時に、人々の生活も豊かになったので、今まで一部の人しか手に入れられなかったコーヒーやチョコレートなどの嗜好品の需要が増えました。しかし、これらの作物はヨーロッパでの栽培は適さず、熱帯・亜熱帯地域で採れるものでした。そこで、欧米諸国は、熱帯・亜熱帯地域の植民地でそれらの栽培を試みました。これが、プランテーション農業の起源です。

当時、欧米の資本と技術で、植民地の安価な労働力を用いて栽培したプランテーション農業は農業生産を効率化させるものでした。

プランテーション作物は輸出用に栽培されるので、プランテーション農園は、熱帯・亜熱帯地域の中でも特に沿岸部に位置しています。沿岸部は輸出するのに便利だからです。

プランテーション農業の作物

プランテーション農業の作物は主に工業原料と嗜好品の2種類に分けられます。工業原料は、天然ゴムや綿花、油やしなど工業製品の原料になるものです。嗜好品は、コーヒーやチョコレートの原料であるカカオなどで、栄養の摂取が目的でなく、楽しむために飲食されるものです。具体的には以下のような作物があります。

プランテーション農業の作物

工業原料:天然ゴム、綿花、油やし

嗜好品:コーヒー、カカオ、茶、バナナ、サトウキビ、油やし

これらの作物はいずれも、欧米の冷涼な気候での栽培は適さず、熱帯・亜熱帯地域で栽培されるものです。例えば、以下の国で栽培されます。

コーヒー:ブラジル、ベトナム、コロンビア、インドネシア、ホンジュラス、エチオピア

カカオ豆:コートジボワール、ガーナ、インドネシア、ナイジェリア、カメルーン、ブラジル

パーム油(油やし):インドネシア、マレーシア

天然ゴム:タイ、インドネシア、ベトナム、インド、中国、マレーシア

茶:中国、インド、ケニア、スリランカ、ベトナム、トルコ

バナナ:インド、中国、インドネシア、ブラジル、エクアドル、フィリピン

綿花:インド、中国、アメリカ、パキスタン、ブラジル、ウズベキスタン

これらの作物を詳しく見ていきましょう。

コーヒー

ベトナム・エチオピアときたらコーヒー豆

コーヒーに適した気候は、年平均気温20度前後で、年降水量2000㎜前後、中でも、育成時に多雨で収穫時に乾燥していることが求められます。これらの地域は、南北の回帰線の内側に属するコーヒーベルトと呼ばれる地帯に分布します。コーヒーの栽培は、このコーヒーベルトで行われています。コーヒーベルトは以下の地図の青色の地域です。

コーヒー豆の生産量上位6カ国のすべてがコーヒーベルトに位置していることが分かります。

カカオ

西アフリカが来たらカカオ豆

カカオ豆はチョコレートやココアの原料として用いられます。特徴は、コートジボワールの生産が圧倒的に多く、約40%を占めている点です。

カカオの木は風や直射日光を遮るためのより大きな木の下で育ちます。また、収穫に手間がかかるなどの理由で、カカオ豆の栽培は大規模でなく、零細農家が担っています。また、カカオ豆は高温多湿の地域で栽培されます。生産上位国の位置は以下の通りです。

いずれの国も赤道付近の熱帯気候に属する国です。カカオ豆の生産国は西アフリカの中でもギニア湾沿岸の国が多くなっています。

油やし

油やしは、その果実からパーム油をとるために栽培されています。パーム油の使用用途は多岐にわたります。パーム油は主に、植物油として菓子や加工食品などの材料に用いられています。食用植物油に占めるパーム油の割合は異常に高く、大豆油やひまわり油、なたね油よりも多く使われています。パーム油がほかの植物油と比べて安価で安定した供給が可能なためです。一方、パーム油は洗剤などに用いられ、工業原料としても使用されています。また、近年ではバイオマス発電の燃料としても使用されています。油やしの生産上位国は以下の通りです。

インドネシア・マレーシアが圧倒的なのはパーム油

見ての通り、パーム油の生産量はインドネシアとマレーシアが圧倒的で、2国合わせて80%以上のシェアを誇ります。生産国の位置を確認しましょう。

地図の通り、生産上位国は東南アジアに集中していることが分かります。

天然ゴム

天然ゴムは工業原料として用いられます。タイヤやホースなどの工業製品です。中でもタイヤは天然ゴムの使用量の80%にも及びます。

タイがきたら天然ゴム

天然ゴムの生産国は、油やしの生産国と同様に東南アジアに集中しています。天然ゴムも熱帯気候で育成するため、赤道付近の国で生産量が多くなっています。

天然ゴムは、パラゴムの木の幹に傷をつけ、そこから染み出た樹液を原料としています。収穫に大変手間がかかる物であり、天然ゴムはカカオ豆と同様に、大規模なプランテーション農園での栽培でなく、小規模な個人農家によって栽培されることが多くなっています。

ケニア・スリランカときたら茶

茶の生産の特徴は2点あります。1点目は、茶の生産国は国内での消費が多く、プランテーション作物の特徴であった生産量≒輸出量が成り立たないことです。茶は欧米での需要を背景に、プランテーション作物として栽培される一方で、元からその土地で飲まれていたものでもあります。中国やトルコでは元から茶を飲む習慣があるため、茶は輸出用ではなく、国内で消費するために栽培されています。2点目は、生産国の上位にイギリスの旧植民地が多く含まれていることです。上記のグラフでは、インド、ケニア、スリランカが該当します。これは、イギリスでは紅茶の消費が盛んです。この消費量を賄うために、イギリスの旧植民地では、茶が栽培されるようになりました。

茶は温帯で栽培されるため、今までの作物に比べると、その栽培地域は高緯度側に広がっていることが確認できます。中でも茶の栽培は、モンスーンアジアで盛んにおこなわれています。ケニアは赤道直下の国ですが、高原で栽培を行うことにより生産が可能になっています。

バナナ

エクアドル・フィリピンときたらバナナ

バナナの生産は熱帯・亜熱帯地域を含む人口の多い国で栽培されています。グラフの国名の後の()は人口を表しています。これを見ると、人口が多い国で栽培されているのが分かると思います。プランテーション作物としてのバナナの栽培で重要な国はエクアドルとフィリピンです。ほかの国が自給用として栽培する一方で、この2国はバナナを輸出用として栽培しています。フィリピンは日本や韓国などの東アジアに、エクアドルはアメリカやカナダなどの北米に向けて輸出されます。

綿花

アメリカ・ウズベキスタンときたら綿花

綿花の栽培は、温暖多雨で、収穫期に乾燥することが望ましいです。当然栽培地域もこのような条件を満たす必要がありますが、灌漑をすれば乾燥した地域でも栽培可能です。例えば、生産量6位のウズベキスタンは乾燥気候ですが、アムダリア川、シルダリア川を水源として、ソ連の時代に大規模灌漑開発を進めたことで、生産が可能になっています。アメリカでは南東部のコットンベルトと呼ばれる地域で栽培されています。

以上をまとめると、栽培されている国を見て作物を答える問題は次のポイントを押さえれば解くことができます。

ベトナム・エチオピアときたらコーヒー豆

西アフリカが来たらカカオ豆

インドネシア・マレーシアが圧倒的なのはパーム油

タイときたら天然ゴム

ケニア・スリランカときたら茶

エクアドル・フィリピンときたらバナナ

アメリカ・ウズベキスタンときたら綿花

プランテーション農業のデメリット

プランテーション農業の概要を紹介したところで、プランテーション農業の問題点にも触れていきます。

プランテーション農業の問題点は、環境問題と経済問題と社会問題の3つに分けられます。

まず、環境問題について。プランテーション農業とは、主に熱帯・亜熱帯地域において大規模に単一耕作することです。熱帯雨林を切り開いて、大規模期1つのものだけを栽培することにより、そこのある生態系を破壊する恐れがあります。また、農薬の散布や過度の灌漑により、土壌の劣化を引き起こします。灌漑をすることや同じ作物を育て続けることで塩害を起こすこともあります。過度な感慨は水資源の枯渇を引き起こす恐れがあります。実際に、ウズベキスタンはアムダリア川とシルダリア川を水源として灌漑をすることで綿花の栽培が盛んになりました。しかし、行き過ぎた灌漑により、アラル海という湖はアムダリア川とシルダリア川からの流入量が減り、その面積は10分の1にまで干上がってしまいました。

次に、経済問題について。プランテーションでは現地の住民が安価な賃金で働かされ、作物も安価な価格で買い取られるという現状があります。プランテーション作物を育てるだけでは経済的に豊かになりにくい構造になっています。このため、フェアトレードという動きがみられます。フェアトレードとは、プランテーション作物を適正価格で継続的に買い取ることで、生産者と買い取り業者を対等な関係にしようとするものです。プランテーション農業が経済の主体である国は、モノカルチャー経済であるといえます。モノカルチャー経済とは、単一の鉱物や農作物に大きく依存した経済形態です。モノカルチャー経済の国は、プランテーション作物の国際価格に、その国の経済が大きく左右されてしまうため、経済が安定化しないという問題があります。

また、プランテーション農業をすることで、自国で食べられる農作物を栽培しなくなり、食糧自給率が低下することが考えられます。先進国にとっても問題はあります。プランテーション作物は栽培されている国が偏っていることが多く、その国の政治状況や気候変動などで安定して作物を輸入できないという問題があります。

最後に、社会問題について。プランテーション農園での労働は賃金が安く、労働環境が悪く、労働者の搾取や人権の侵害が報告されています。とりわけ児童労働や強制労働が問題となっています。

このようにプランテーション農業には多くの問題点がありますが、メリットもあります。

プランテーション農業のメリット

プランテーション農業は1つの作物に特化しており、大規模に栽培するため、生産性が向上し、効率的に作物を育てることができます。さらに、1つの作物に特化するということは、その作物の栽培技術が蓄積されるので栽培方法や管理体制、害虫対策などの面において小規模農業よりも優位になります。

まとめ

プランテーション農業

欧米諸国が熱帯・亜熱帯地域にある植民地で、輸出向けの作物を大規模に、単一耕作するもの

特徴

・どこ?:熱帯・亜熱帯地域の旧植民地(特に沿岸部)

・いつ?:17世紀~現在

・何を作る?:天然ゴムや油やしなどの工業原料やカカオやコーヒーなどの嗜好品

プランテーション農業の作物

工業原料:天然ゴム、綿花、油やし

嗜好品:コーヒー、カカオ、茶、バナナ、サトウキビ、油やし

ベトナム・エチオピアときたらコーヒー豆

西アフリカが来たらカカオ豆

インドネシア・マレーシアが圧倒的なのはパーム油

タイときたら天然ゴム

ケニア・スリランカときたら茶

エクアドル・フィリピンときたらバナナ

アメリカ・ウズベキスタンときたら綿花

プランテーション農業のデメリット:環境・経済・社会問題

プランテーション農業のメリット:生産性・栽培技術の向上

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