栽培限界とは?~農業は気温や降水量の影響を受ける~
栽培限界とは、「環境によって決定される作物の栽培が可能な範囲の限界」のことです。「小麦の栽培限界」や「ブドウの栽培限界」といったように、栽培限界は作物ごとに存在します。これだけでは何のことだか分かりませんね。
もう少しかみ砕きます。例えば米を砂漠や南極大陸で作ることを考えます。なんとなく無理そうなことが分かります。砂漠は雨が少なすぎるから、南極大陸は寒すぎるからです。このように、ある作物を栽培しようとしたときに気温や降水量によって、栽培できる地域が限られるのです。このとき、栽培できる地域と栽培できない地域の境界のことを栽培限界といいます。栽培限界を地図に表すと次のようになります。地図についてはのちほど詳しく解説します。
栽培限界は「何が原因で栽培できなくなるのか」によってより詳しく分類できます。栽培に必要な最低限の気温に注目した寒冷限界、降水量に注目した乾燥限界、標高に注目した高距限界などがあります。
また、似た言葉に耕作限界というものがあります。耕作限界とは、作物を栽培するときに、利益が得られる限界のことを言います。
栽培限界の地図の見方
下の栽培限界の地図を見てください。
この図は、小麦の栽培限界の地図です。この線より赤道側(内側)は小麦が栽培できる地域、この線より極側(外側)は小麦が栽培できない地域です。つまり、この赤い線は、小麦が栽培できる地域の限界を示しているのです。
ヨーロッパの栽培限界は特に重要
栽培限界の考え方はヨーロッパの農業を知るうえで欠かせません。さっそくですが、ヨーロッパの栽培限界の地図は以下のようになります。
ヨーロッパの各作物の栽培限界は、南から順にオリーブ→ぶどう→小麦となります。
オリーブは、下の図の栽培限界の線より南側で栽培されています。ポルトガル、スペイン、イタリア、ギリシャなどです。これらの地域では、地中海式農業という、夏にオリーブなどの耐乾性作物を栽培し、降水のある冬に小麦を育てる農業が行われています。
ブドウは下の図の栽培限界の線より南側で栽培されています。スペイン、イタリア、フランスなどです。フランスのパリ盆地では、水はけのよいケスタ地形の斜面を生かしてぶどう栽培が盛んです。収穫したぶどうはワインの生産に用いられます。
小麦は下の図の栽培限界の線より南側で栽培されています。小麦は寒さに強いため北部でも栽培することができます。これらの地域では、小麦などの栽培と家畜の肥育を組み合わせた混合農業が行われています。注意すべき点は、栽培限界の線はかなり北部にありますが、線の付近の地域では寒さのため小麦は栽培されず、酪農が中心となっていることです。
次に示す図は、氷河期の氷河の最大範囲です。氷河におおわれていた土地は養分が乏しいです。そのため、これらの地域では、やせた土地でも育つじゃかいもを栽培したり、牧草を育てて酪農を営んだりしています。
各作物の栽培限界
耕作の限界
耕作の限界とは、すべての作物の栽培の限界ということです。この線より極側(外側)では、どんな作物であっても栽培できません。この地域は、ケッペンの気候区分における寒帯(E気候)とほぼ一致します。
小麦・とうもろこし・稲の栽培限界の関係
小麦・とうもろこし・稲(米)は3大穀物と称されています。3大穀物の栽培限界は、南から順に稲→とうもろこし→小麦の順です。
ココヤシ・ナツメヤシの違いと覚え方とは?
地理を勉強していると、名前が似ているココヤシ・ナツメヤシの違いに惑わされることがあるかもしれません。しかし、栽培限界の地図を見れば違いは一発で覚えられます。
ココヤシはココナッツのなる木です。ココナッツは南国のイメージがありますね。栽培限界を見てみると確かに熱帯気候の境界であることが分かります。
一方、ナツメヤシの実はデーツです。ドライフルーツとして有名ですね。栽培限界を見てみると、砂漠気候の境界であることが分かります。ドライフルーツと乾燥(砂漠気候)をかけ合わせたら覚えやすそうです。
まとめ
〇栽培限界
「環境によって決定される作物の栽培が可能な範囲の限界」
寒冷限界、乾燥限界、高距限界などがある
〇耕作限界
作物を栽培するときに、利益が得られる限界
〇ヨーロッパ
栽培限界は南から順にオリーブ→ぶどう→小麦
〇三大穀物
南から順に稲→とうもろこし→小麦
〇ナツメヤシとココヤシ
ナツメヤシの実はデーツ→砂漠
ココヤシの実はココナッツ→熱帯