人口転換と人口ピラミッド-日本・世界の人口ピラミッドはどんな形?

人口

KEY WORDS
人口転換 人口ピラミッド 富士山型 つりかね型 つぼ型 ひょうたん型 星形 合計特殊出生率 移民

出生率と死亡率

人口ピラミッドを語る上で欠かせない出生率と死亡率の定義について説明します。出生率とは、ある1年間において、人口1000人当たりの生まれた子供の数を表します。これに対して死亡率とは、ある1年間において、人口1000人あたりの死亡数です。

これらの単位は、‰(パーミルと読む)で表されます。日本語では、千分率と言います。漢字のとおり、1000個当たりの個数を表し、1000分の1を1とします。100個当たりの個数を表す百分率は良く知られている%(パーセント)です。例えば、42‰=4.2%となります。

出生率と死亡率の差が、人口の自然増加率となります。人口増加率は自然増加率だけによるものではありません。他の地域からの流入数と流出数も加味しなければなりません。流入率と流出率の差を自然増加率に対し、社会増加率といいます。人口増加率は自然増加率と社会増加率を合わせたものになります。

人口転換

以下の4つの人口動態の一連の流れを人口転換と呼びます。

第1段階は、出生率と死亡率が高い多産多死

第2段階は、出生率が高く、死亡率が低い多産少死

第3段階は、出生率と死亡率がともに低い少産少死

第4段階は、出生率が低く、死亡率が高い、少産多死

これらの4つの段階について詳しくみていきましょう。

人口ピラミッドとは

Wikipedia「人口ピラミッド」よりPublic domainの画像を使用

人口ピラミッドとは、ある地域や国の、男女別の年齢段階に分けて、その割合や数を表したグラフのことです。中央の縦軸を境に、左右で男女の人口に分かれています。中央の縦軸は、年齢を表し、底辺の横軸は、男女別の人口数または人口の割合を表しています。15歳未満の人口を年少人口、15~64歳の人口を生産年齢人口、65歳以上の人口を老年人口としています。

多産多死と富士山型の人口ピラミッド           

Wikipedia「人口ピラミッド」よりPublic domainの画像を使用

多産多死、すなわち出生率、死亡率が高い時段階では、富士山型の人口ピラミッドになります。裾野が広く、年少者の人口の割合が高くなっています。富士山型の人口ピラミッドは、戦前の日本を含むほとんどの国で見られました。現在でも、サハラ砂漠以南のアフリカではこのような形がみられます。

このような地域では、子供を農業の労働力として用いたり、老後の面倒を見させるため、出生率が高くなっています。また医療、公衆衛生、栄養状態が十分でないため、死亡率、特に乳幼児死亡率が高くなっています。

多産少死とピラミッド型の人口ピラミッド

Wikipedia「人口ピラミッド」よりPublic domainの画像を使用

多産多死から経済発展をすることで、多産少死すなわち、出生率が高く死亡率が低い状態に移行します。この段階の人口ピラミッドは底辺が少し小さくなり、ピラミッド型の人口ピラミッドになります。これは1950年頃までの日本や、現在の、フィリピンやインドなどの多くの発展途上国で見られます。

出生率が高いまま、医療、公衆衛生、栄養状態の改善などで死亡率が低下している段階です。この段階では、死亡数より出生数が大幅に増えるため、人口が急激に増加します。これを「人口爆発」と呼びます。

少産少死とつりかね型の人口ピラミッド

Wikipedia「人口ピラミッド」よりPublic domainの画像を使用

さらに経済発展することで、少産少死、すなわち出生率死亡率がともに低い状態に移行します。人口ピラミッドは、年齢による割合の変化があまり見られず縦に伸びた、つりかね型(ベル型)になります。これは、アメリカやフランスなどの先進国で見られます。

子供を産む人数や時期を計画的に調整して、生活水準を維持しようとすることで、出生率が低下します。この段階では、出生数と死亡数が釣り合うことで人口が変化しない静止人口が続きます。一般に先進国は死亡率が出生率を上回り、人口減少が進む少産多死型になることが多いですが、アメリカやオーストラリアは積極的に移民を受け入れてきたことにより、その人口を維持しています。

少産多死とつぼ型の人口ピラミッド

Wikipedia「人口ピラミッド」よりPublic domainの画像を使用

経済成長する中で、出生率が減少している地域もあります。現在の日本、イタリア、ウクライナ、韓国などです。これらの地域では、急速な女性の社会進出や家族計画などで出生数が減少しています。その一方、医療、公衆衛生、栄養状態が整っていることで、高齢者の割合が高くなっています。これを少子高齢化といいます。このような人口ピラミッドは、つぼ型と呼ばれています。少子高齢化の社会では、総人口に占める老年人口の割合が高くなることで、死亡率が上昇します。この結果、死亡率が出生率より高くなります。また移民の受け入れに厳しく社会増加を図ることができず、人口が減少に転じます。

日本では、2000年代から人口減少に転換しました。

合計特殊出生率

1年間で、ある地域で1000人当たり何人の子供が生まれるかが出生率でした。これに対して、合計特殊出生率というものもあります。合計特殊出生率とは、1人の女性が一生のうちに産む子供の数に相当するものです。

より詳しく説明すると、合計特殊出生率には、期間合計特殊出生率コーホート合計特殊出生率の2種類があります。期間合計特殊出生率とは、ある1年間において、15歳~49歳の女性の出生率を合計したものです。これは調査した年の出生率を表します。それに対して、コーホート合計特殊出生率とは、ある年に生まれた女性を対象に、15歳~49歳までの出生率を合計したものです。これはある年代の出生率を表します。

また、人口を維持できる合計特殊出生率を人口置換水準といいます。先進国では人口置換水準が約2.1で人口を維持できます。日本の人口置換水準は2.07ですが、現在の合計特殊出生率は1.34で、これを下回っています。また乳幼児死亡率が高い発展途上国では、人口置換水準は高くなります。

移民による歪な形の人口ピラミッド

Wikipedia「人口ピラミッド」よりPublic domainの画像を使用

今までは主に自然増加による人口ピラミッドの転換について説明しました。この一方で、社会増加による特殊な形をしている人口ピラミッドも見られます。上の図は中東のカタールという国の人口ピラミッドです。これがほかの国の人口ピラミッドと異なる点がいくつかあります。まず1つ目は、女性の人口よりも男性の人口のほうが圧倒的に多いことです。2つ目は、年少人口と老年人口が少なく、20代から40代くらいまでの生産年齢人口が極端に多くなっていることです。これはどうしてでしょうか?

カタールはペルシャ湾にあり、石油が取れる産油国です。このため労働不足問題が生じ、積極的な移民の受け入れをしています。現在では、インドやバングラディシュからやってくる移民が国民の80%以上を占めています。入国に必要なビザを発行する際、労働者単身で入国しなければいけなかったり、働けなくなると国外退去しなければならなかったりして、男性の生産年齢人口が多くなっているからです。

限界集落・地方のひょうたん型ピラミッド

人口ピラミッドは国家スケールのものだけではありません。ある地域の人口ピラミッドを見ると、不思議な形をしているものがあります。例えば、この人口ピラミッドは若い生産年齢人口が少なくなっています。これはなぜでしょうか?地方の農村などでは、若者が、大学進学や職を求めて都市に移住してしまったからだと考えられます。

都市やロシアの星型人口ピラミッド

これは主に都市部にみられる人口ピラミッドです。他の地域から職を求めて労働者が流入してくることによって、生産年齢人口が多くなっています。またロシアでもこのような形がみられます。ロシアでは、一度減少した出生率を取り戻すために国が、出産子育てのための手厚い支援対策をしました。その結果、減少していた出生率が近年増加してひょうたん型の人口ピラミッドになっています。

ニュータウンの特殊な人口ピラミッド

日本では、東京や大阪などの大都市で、主に1970年代に人口が増加したことで、郊外にニュータウンと呼ばれる団地が作られました。例えば、東京都多摩市の多摩ニュータウンや、大阪府千里篠千里ニュータウンです。これらの地域では、団地が開かれた当初は、子育て世代が多く流入してきて、生産年齢人口と年少人口が極端に多い人口ピラミッドとなっていました。しかし、時代がたつにつれ、ニュータウンの入居者の高齢化を背景に、老年人口が多く、生産年齢人口と年少人口が少ない、ひょうたん型の人口ピラミッドになっています。

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